2025-05-28

第5回 この植物は安曇野の冬を越せます

太平洋側の照葉樹林帯で育った私にとって、信州の夏緑広葉樹林帯は憧れの植生でした。照葉樹林に恨みがあるわけではありませんが、爽やか、涼しい、明るい、おしゃれ・・・信州の植生にはそんなイメージを抱いてしまいます。向こうでは育てられなかった寒冷地の植物を育てられるのは本当に喜びです。

もちろん、温暖地や南国の植物にもすてきなものはたくさんあります。レモン・夏ミカン・温州ミカン・ユズなどの柑橘類、フェイジョア・オリーブなどの温帯性・亜熱帯性果樹、ほかにも、寒さに弱いフヨウ・ボタンクサギなど。これらが好きで庭に植えていたので、安曇野でも育てたい――照葉樹林に背を向けながら、なんと勝手で欲張りな私でありましょうか。これらは地植えでは安曇野の冬は越せません。

ところが。図鑑などで冬越しダメとあっても、実際育ててみると大丈夫なものもあるんです。しかも近年の温暖化によって、年を追うごとに冬越しが楽になっている感じも。今回はそんな、安曇野での露地植えでは冬越しは無理と思われそうでも何とかなるorなりそうな植物をご紹介します。(*はこごみの庭に植えてあります)

♦アガパンサス*

残念ながら、大型の冬でも落葉しないタイプは、地植えのままでの冬越しは無理です。でも、小型の冬期落葉種は大丈夫。こごみの庭のアガパンサスは‘プルート・ベール’という品種です。

♦アジサイ類*

小さい株はいつまで経っても小さいまま。乾燥したこごみの庭だからなおさら生育がふるわないのかも。植えるなら大株がいい。ヤマアジサイ・カシワバアジサイ・‘アナベル’は寒さに強い。

♦アオキ

本来は照葉樹林帯の木。太平洋側では飽きるほど当たり前に生えてます。こちらでは軒下などに植栽してあるのをたまに見かけます。ただ、乾いた土では育ちがよくない。

♦イチジク

安曇野・松本でも、けっこう大きく茂っている株を見ることがあります。寒さに比較的強いと言われる‘蓬莱柿(ほうらいし)’の小苗を植えてみましたが、ダメでした。やはり大きな株を植えるところから始めた方がいいでしょうね。

♦カラタチ

柑橘で唯一育つのがこれ。たまに見かけます。鋭いトゲはサル侵入防止にいいかも。

♦キンモクセイ*

小苗を植えたものは何年経っても大きくならず。春に植えた大きな苗の方は順調に育って、花も少し咲かせてくれました。ただ、うちの庭の乾燥も影響するのか、枝先が若干枯れ込みます。大苗を買った店の方の話では「株のすぐ北側に白い壁があって、それが北風を防ぎ、太陽の熱を蓄えてくれるのか、すごく立派なキンモクセイに成長している、そういうお宅がありますよ」とのことでした。

♦ゲッケイジュ*

斑入りが欲しくて、昨年鉢植えの小苗の状態で買いました。そのままで何もかぶせず屋外で冬越しできました。葉は枯れ込みましたが、新葉が出てきてます。

斑入りの月桂樹
この鉢のまま一冬越しました。ただ昨年の葉は枯れました

♦ジンチョウゲ*

デッキに上がる手前、南向きの軒下に‘信濃錦’‘前島’という斑入りの品種を植えてあります。おととしと去年は不織布で覆いましたが、この冬は何もかぶせませんでした。立派に花を咲かせてくれました。

軒下のジンチョウゲ‘信濃錦’
小さな苗木時代は毎冬不織布で覆いましたが、今冬は何もせず、花もたくさん咲かせてくれて今はこのとおり

♦センペルビウム*

多肉植物のうち「寒さに強い」と言われている種類でも、ほとんどのものは露地植えのままではダメです。でもこれは大丈夫。

ロックガーデンのセンペルビウム 左下のがそうです。
これもセンペルビウムです

♦タイサンボク(ヒメタイサンボク)

大きな木に成長しているのを、安曇野市内のいくつかのお宅でおみかけします。

♦ダリア*

驚いたのがこのダリア! ダリアは、寒いところでは「冬は球根を掘り上げて」が常識になってるようですが、ある年、掘り上げず株元に堆肥のマルチを盛り上げるだけにしてみたところ、なんと見事に冬越し成功。しかも地中で球根が増えて前の年以上に立派な株に。この冬は堆肥のマルチも無しで、刈り取った草で覆っただけにしてみましたが、先日草をどけてみたら、芽を出してましたよ。

♦ビワ

庭先で立派に茂っているお宅を見たことがあります。でも、これも植え付け時には大きな苗の方がいいと思います。

♦ヤツデ

アオキと同様といった感じ。

♦ユッカ

寒さに強いと聞きます。実際、立派に育った株を見かけます。

次回はバラについて。調子に乗っていろいろな品種を植えてありますが、こごみの庭での各品種の育ち方をお伝えします。

関連記事